ほりぃのブログ

【本の感想】「一汁一菜でよいという提案」

タイトルに惹かれて土井善晴先生の本を読みました。おもしろかった!

まず「一汁一菜でよい」というのを料理の先生が言うというのがすごいと思うんですよね。いろんなメニューに挑戦しろとか、もっと手を掛けておいしいものを作ろうとかの提案じゃないんだ…。

一汁一菜でよいという提案

 

自分がよかったと思ったところは、主に前半部分。

毎日、毎食、一汁一菜でやろうと決めて下さい。考えることはいらないのです。これは、献立以前のことです。(12ページ)

前半部分のメモ↓

  • 家庭料理とご馳走は違う。ハレとケ
  • ごはんとお味噌汁とお漬物でいい(一汁一菜)
  • 一汁一菜は「型」。毎日毎食それでいい。歯磨きやお風呂と同じこと。
  • 食事作りにストレスをなくし心に余裕が生まれる
  • 表層的で派手なおいしさと身体全体が喜ぶ穏やかなおいしさを区別する
  • 食レポみたいな「おいしいっ!」を狙わなくていい。「普通においしい」で十分、なんだったらおいしくなくてもいい(!)

たしかになぁ。

私もなんですけど、「料理をちゃんとしないと」と思いながらもできないでいる人や、「一応作ってるけど、簡単なものだからなんか家族に申し訳ない…」という人は、このへん読んでて泣きそうになるんじゃないでしょうか。

手の掛からない、単純なものを下に見る風潮がお料理する人自身のハードルを上げ、苦しめることになっているのです。(23ページ)

本の後半は日本の食文化や美意識、季節ごとの楽しみなどのお話。それから親が子供に食事を作ることの意義、それがレストランやコンビニごはんとはどう違うのかについても書かれています。

食べる人は、作ってもらった料理を通して、お腹を満たすだけでなく、作る人の考えていること、その料理の背景にあるものを受け取ります。そして、料理を食べる家族の様子や言葉から、作る人もまた多くのことを受け取っています。(94ページ)

静かな文体も私好みで、テレビで見る土井先生のやわらかくピシリとしたあの感じ。実用書みたいに要点だけかいつまんだり、パーッと速読するんじゃなくて、ゆっくり読みたい本です。ドミニック・ローホーの「シンプルに生きる」みたいな雰囲気がします。

日本の文化に触れているけど、必要以上に「昔はよかったけど今の人はだめだー」みたいなdisがないし、こころの話題になっても「感謝のパワーが水にどうのこうの」みたいな方面にはならないのもよかったです。個人的にそこけっこう気になってしまうんですよね。

お料理の写真もたくさんあって楽しいです。「繕わない味噌汁」のページとか、ほんとに繕ってなくてフフってなります。

料理の作り方や考え方は書いてあるけど、いわゆるあれが何cc、これが何gみたいなレシピ本ではないです。そういうのは不要という考えで、あえて書いてないのだと思います。